本れびゅ。

小説やライトノベルなどの感想を思うがままに。

絞り込み 記事更新日=「2013/08」

プリティが多すぎる    2013/08/23
十二国記 丕緒の鳥    2013/08/05
心霊探偵八雲 another files いつわりの樹    2013/08/04


プリティが多すぎる

2013/08/23更新  ≪大崎梢≫ ≪文芸春秋≫ ≪2012年発行≫ ≪2013/08

プリティが多すぎる

『プリティが多すぎる』
大崎梢著 文芸春秋


どピンクで、ハートやリボンなどでデコレートされたような表紙に、
「なんじゃこりゃ」と思う読者も多いと思います。とくに男性は。
私も最初そう思ったんですが、あらすじを聞いて納得。
そして興味を持ちました。

ローティーン雑誌の編集に異動になった主人公が、
専属モデルたちと触れ合いながら成長していくというお話です。

知らない世界を知るというところに、職業物の面白さはあると思います。
ローティーン雑誌の話なんて聞いた事も無かったし、
そういう雑誌の専属モデルの事なんて考えた事も無かったので、
まずそこに興味を惹かれました。
可愛いモデルの撮影会など、楽しい話なんだろうなぁと思ってました。

が、読んでみてビックリ。
そこにあるのは、見た目からは想像も付かない、シビアな世界。
主人公を、社会では当然ともいえる理不尽が襲います。
そして、編集者としていろんな失敗や挫折を経験します。
モデルたちも、中学生の頃からモデルという過酷な競争社会に自ら飛び込み、
悔しい思いをしながらも、仕事ではニコニコ笑って撮影に向かう。
他にも、カメラマンやスタイリストなど、雑誌に関わる色々な人々も描かれていて、
みんながそれぞれの仕事に向かう真剣な姿に、心を打たれました。

きっと多くの人が味わったことのある、苦労や挫折、失敗や成功など、
いろんな事を思い出してしまい、胸が苦しくなったり、楽しくなったりして、
最後には思わず涙が出ました。

もちろん、読者層の特殊性や、撮影などの大変さ、
中学生モデルたちの大変さなど、職業物として大変面白い出来になってます。

この世界は、甘くも可愛くも無い。
でも真剣な姿が美しく見える。
頑張ろう、と素直に思える。そんな一冊でした。


 




十二国記 丕緒の鳥

2013/08/05更新  ≪小野不由美≫ ≪新潮文庫≫ ≪2013年発行≫ ≪2013/08

十二国記 丕緒の鳥

『十二国記 丕緒の鳥』
小野不由美著 新潮文庫


十数年ぶりの新作も、作者はファンを甘やかさなかった…!

十二国記シリーズの、ファン待望の新刊。今回は番外的な短編集。
十二国記シリーズは、前作の「華胥の幽夢」から数年新作が発表されず、
短編が発表されても刊行されないという、ファンにとっては生殺しな状態だった。らしい。
らしい、というのも、私が十二国記を初めて読んだのが去年の秋のことで、
私にとっては生殺しという感覚が無いからです。
しかし、私に十二国記を勧めてくれた友人は相当悶えていたようで、
発売日には歓喜の叫びを上げていました。
十年以上のときを経ても、ファンの心をがっちり掴んで離さない。まさに名作。

まず、十二国記シリーズについて。
古代中国のような世界観の、国や時代を超えた、大河ドラマのようなダークファンタジー。
現実世界とは世界の仕組みが全く違う異世界で生きる、様々な人間のドラマを描いていく。
冒険あり、戦争あり、そして国政ありと、
短編を含めると非常に多彩な物語の集まりが、十二国記というシリーズです。
シリーズに一環して流れるのは、苦しさの中で必死に生きようとする人々の姿。
暗く重い悲惨な話を、登場人物たちの頑張りで逆転させていくというカタルシスは、まさに脳汁もの。
また、時代も国もバラバラの壮大なストーリーには時折共通点があり、
それに気付いたときの驚きも読んでて気持ち良いポイントです。


さて、本作について。
王や麒麟を中心に描いてきた過去の作品とは一線を画して、
徹底して民(というより国官の仕事)にスポットを当てている短編集です。
王を失い、乱れた国の中で、世界のために必死で働く男たちの戦いが胸を熱くします。
4本ある短編はすべて視点も職業も異なり、作品の雰囲気も違うものになってます。

中でも個人的なオススメは、丕緒の鳥と青条の蘭。
丕緒の鳥は、ここに焦点を当てるかー!って感じです。
「やたら派手な物々しい儀式」としか認識してなかったものに、実感が加わりました。
ここを掘り下げるとは驚きでした。
青条の蘭は、この短編集の中でも一際重く苦しい物語で、
その分最後のカタルシスがすごく、脳汁がだらだらと垂れ流されました。
あの絶妙な種明かしは、ファンなら感動間違いなしでしょう。

落照の獄も全く違う視点で面白いし、
風信も普段気にも留めないような事柄にスポットを挙げた、
現実世界にも通じる面白い話になってます。

しかし、十数年経ってやっと出た新刊が、
シリーズの本編ともいえる陽子や泰麒の話じゃないというあたり、
作者の小野不由美氏はファンを甘やかしてませんね。凄い。
でも早く泰麒の話の続きを読ませてー!

あと個人的には範王の話がとても気になります。


 




心霊探偵八雲 another files いつわりの樹

2013/08/04更新  ≪神永学≫ ≪角川文庫≫ ≪2013年発行≫ ≪2013/08

心霊探偵八雲 another files いつわりの樹

『心霊探偵八雲 another files いつわりの樹』
神永学著 角川文庫


八雲が可愛すぎて、生きるのが辛い。

人気シリーズである、心霊探偵八雲の番外編。
同じ番外編であるsecret files絆とはまたちょっと違った観点を持つ、まさにanother filesです。
初めて読んでも支障が無く、全部読んでると思わずおお〜っとなる、と感じました。

まず、八雲シリーズについて。
若い世代の支持を集めている人気シリーズです。
ジャンルとしてはタイトルにある通り探偵物なのですが、他と一線を画す部分があります。
それが、心霊という部分。
このシリーズでは、幽霊の存在を全肯定しています。
主人公の八雲には幽霊が見え、会話をする事が出来ます。
その霊たちを救うため、霊たちの話を聞いて、事件を解決していきます。
被害者の霊だったり、昔に殺され、怨念を持ち続けている霊だったりと、様々な幽霊が出てきます。
しかし、「霊が直接危害を加えることは決して無い」という理念と設定があり、
単なるホラーではなく、むしろ人間ドラマや、八雲の謎解きの面白さが目を引きます。
また、被害者の霊から犯人を聞いて万事解決!なんて簡単なものじゃなく、
様々な謎を捜査を通して解きほぐしていくという、本格的な推理が楽しめます。
推理と心霊を上手く組み合わせたすばらしい作品になってます。


さて、この番外編。
2008年に舞台化された際に書かれたものを小説化したものです。
本編の最新刊と比べると、もう5年も前の話なので、
あのキャラがまだ出てきてない!とかがあります。
そして、本編の主軸である八雲と、黒幕である赤い眼の男との対決が、
この番外編にはありません。
赤い眼の男と関係ないところでも、彼らはこんな事件に巻き込まれていたんですよ、
というような感じの話です。

しかし番外編とはいえ、彼らは相変わらずいい味を出してます。
晴香は厄介ごとを持ち込み、
八雲が皮肉を言い、
後藤は八雲に弄ばれ、
石井さんはよく転ぶ。
彼らのいいチームワークで、徐々に事件が真相に迫っていく感覚はまさに本格ミステリー。
赤い眼の男とのしがらみがないので、むしろ純粋に謎解きを楽しめます。
そして、相変わらず八雲と晴香の関係性がイイ!
なんだかんだと文句を言いつつ、晴香のため、
そして幽霊を含む人のために動くというツンデレっぷりがたまりません。

そして、今回の話の主軸は、なんと石井さん。
本編では大分カッコイイところも増えてきた石井さんですが、
この時期はまだなよなよしてる感じです。今もか。
個人的にすごく好きなキャラクターなので、彼の過去に触れられて感慨深くなりました。
ああ、石井さんが強くなっていった要因の一つは、
もしかしたらこの事件でもあるのかなぁ、とも思います。

これを舞台でやってたんだと思うと、どういう演出をしてたのかなぁと色々想像して、
それはそれで面白かったです。
また舞台化するので、そちらは見に行こうと思っています。

本編にはあまり関係が無く、しかしキャラクターが生き生きとしていて、
そして石井さんという人間を掘り下げる、すばらしいanother filesです。
本編シリーズとあわせて、どうぞ。


 



◎本れびゅ。

作者

岡崎琢磨
小野不由美
神永学
大崎梢
辻村深月
 →作者毎一覧

出版社

角川文庫
講談社
新潮文庫
文芸春秋
宝島社文庫
 →出版社毎一覧

発行年

2010年発行
2012年発行
2013年発行
 →発行年毎一覧

記事更新日

2013
12 10 09 08
 →記事更新日毎一覧

ワード検索