本れびゅ。

小説やライトノベルなどの感想を思うがままに。

絞り込み 発行年=「2013年発行」

十二国記 図南の翼    2013/10/22
十二国記 丕緒の鳥    2013/08/05
心霊探偵八雲 another files いつわりの樹    2013/08/04


十二国記 図南の翼

2013/10/22更新  ≪小野不由美≫ ≪新潮文庫≫ ≪2013年発行≫ ≪2013/10

十二国記 図南の翼

『十二国記 図南の翼』
小野不由美著 新潮文庫


以前、新刊の丕緒の鳥を紹介したばかりですが、新装版が出たので紹介します。
十二国記の中で、私の一番のお気に入りです。


十二国記シリーズは、それぞれ特色があります。
異世界へと飛ばされた少女を描くダークファンタジーであったり、
王にスポットを当てた国を統治する政治の話であったり、
麒麟にスポットを当てた少年の成長の物語であったり。
その中に基本的に描かれているのは、絶望的な暗い話の中で、希望に向かう流れ。
そのカタルシスが最高に気持ち良い物語です。


そんな中、この話は少し違います。


図南の翼は、昇山を目指す少女の、正統派冒険譚。
主人公は、首都に住む商家の娘、まだ10歳そこそこの少女、珠晶。
荒廃する国を案じながらも、自ら王になろうという気概の無い大人たちにうんざりし、
「ならばあたしが王になるわ!」と、珠晶は王になるために黄海への旅に出る。


この話が好きだという理由は多数ありますが、
一番の理由は、全体的に明るい雰囲気がある、ということです。
話の主題のためでもあるのですが、珠晶のキャラクターがとにかくハツラツとしていて、
つい応援してしまうような、見ていて楽しい、明るい気持ちになります。

普通なら、絶望的な旅路の話。
他のシリーズにあるような暗い雰囲気も、珠晶のキャラクターもあって明るく感じ、
その中でも絶望から希望へのカタルシスを忘れない、すばらしい作品です。


前にも読んだことはあったのですが、新装版を購入して改めて読み返しました。
やはり何度読んでも珠晶のキャラクター、彼女の旅路にはとてもわくわくします。
さらに、最初に読んだときには気付かなかった事にいくつも気付きました。
ああ、珠晶の旅にはこんな意味があったのか!ここで迎えに来た理由はそうか!
すべての出会い、事柄には意図があった!
と、天帝の意向を改めて認識し、話の上手さに感動しました。


また、ファンなら思わずにやりとしてしまうであろうシーンが盛り沢山。
黄海での、まさかのあの人との出会い。名を聞いたときに思わずうなりました。
最後にわかる、彼の正体。怪しいとは思ったけど、まさかそういう人だったとは!
迎えに来た彼に対する、珠晶の最後の一言。さすが珠晶!
どれも印象的で素敵なシーンです。


十二国記シリーズはどれも面白いですが、暗い雰囲気がダメだという人はいるでしょう。
そんな人には、この図南の翼はオススメです。

国や王、麒麟の設定がちょっとわかりにくいかも知れませんが、
それでも丁寧に物語が描かれているので、初めての人でも十分楽しめるでしょう。


 




十二国記 丕緒の鳥

2013/08/05更新  ≪小野不由美≫ ≪新潮文庫≫ ≪2013年発行≫ ≪2013/08

十二国記 丕緒の鳥

『十二国記 丕緒の鳥』
小野不由美著 新潮文庫


十数年ぶりの新作も、作者はファンを甘やかさなかった…!

十二国記シリーズの、ファン待望の新刊。今回は番外的な短編集。
十二国記シリーズは、前作の「華胥の幽夢」から数年新作が発表されず、
短編が発表されても刊行されないという、ファンにとっては生殺しな状態だった。らしい。
らしい、というのも、私が十二国記を初めて読んだのが去年の秋のことで、
私にとっては生殺しという感覚が無いからです。
しかし、私に十二国記を勧めてくれた友人は相当悶えていたようで、
発売日には歓喜の叫びを上げていました。
十年以上のときを経ても、ファンの心をがっちり掴んで離さない。まさに名作。

まず、十二国記シリーズについて。
古代中国のような世界観の、国や時代を超えた、大河ドラマのようなダークファンタジー。
現実世界とは世界の仕組みが全く違う異世界で生きる、様々な人間のドラマを描いていく。
冒険あり、戦争あり、そして国政ありと、
短編を含めると非常に多彩な物語の集まりが、十二国記というシリーズです。
シリーズに一環して流れるのは、苦しさの中で必死に生きようとする人々の姿。
暗く重い悲惨な話を、登場人物たちの頑張りで逆転させていくというカタルシスは、まさに脳汁もの。
また、時代も国もバラバラの壮大なストーリーには時折共通点があり、
それに気付いたときの驚きも読んでて気持ち良いポイントです。


さて、本作について。
王や麒麟を中心に描いてきた過去の作品とは一線を画して、
徹底して民(というより国官の仕事)にスポットを当てている短編集です。
王を失い、乱れた国の中で、世界のために必死で働く男たちの戦いが胸を熱くします。
4本ある短編はすべて視点も職業も異なり、作品の雰囲気も違うものになってます。

中でも個人的なオススメは、丕緒の鳥と青条の蘭。
丕緒の鳥は、ここに焦点を当てるかー!って感じです。
「やたら派手な物々しい儀式」としか認識してなかったものに、実感が加わりました。
ここを掘り下げるとは驚きでした。
青条の蘭は、この短編集の中でも一際重く苦しい物語で、
その分最後のカタルシスがすごく、脳汁がだらだらと垂れ流されました。
あの絶妙な種明かしは、ファンなら感動間違いなしでしょう。

落照の獄も全く違う視点で面白いし、
風信も普段気にも留めないような事柄にスポットを挙げた、
現実世界にも通じる面白い話になってます。

しかし、十数年経ってやっと出た新刊が、
シリーズの本編ともいえる陽子や泰麒の話じゃないというあたり、
作者の小野不由美氏はファンを甘やかしてませんね。凄い。
でも早く泰麒の話の続きを読ませてー!

あと個人的には範王の話がとても気になります。


 




心霊探偵八雲 another files いつわりの樹

2013/08/04更新  ≪神永学≫ ≪角川文庫≫ ≪2013年発行≫ ≪2013/08

心霊探偵八雲 another files いつわりの樹

『心霊探偵八雲 another files いつわりの樹』
神永学著 角川文庫


八雲が可愛すぎて、生きるのが辛い。

人気シリーズである、心霊探偵八雲の番外編。
同じ番外編であるsecret files絆とはまたちょっと違った観点を持つ、まさにanother filesです。
初めて読んでも支障が無く、全部読んでると思わずおお〜っとなる、と感じました。

まず、八雲シリーズについて。
若い世代の支持を集めている人気シリーズです。
ジャンルとしてはタイトルにある通り探偵物なのですが、他と一線を画す部分があります。
それが、心霊という部分。
このシリーズでは、幽霊の存在を全肯定しています。
主人公の八雲には幽霊が見え、会話をする事が出来ます。
その霊たちを救うため、霊たちの話を聞いて、事件を解決していきます。
被害者の霊だったり、昔に殺され、怨念を持ち続けている霊だったりと、様々な幽霊が出てきます。
しかし、「霊が直接危害を加えることは決して無い」という理念と設定があり、
単なるホラーではなく、むしろ人間ドラマや、八雲の謎解きの面白さが目を引きます。
また、被害者の霊から犯人を聞いて万事解決!なんて簡単なものじゃなく、
様々な謎を捜査を通して解きほぐしていくという、本格的な推理が楽しめます。
推理と心霊を上手く組み合わせたすばらしい作品になってます。


さて、この番外編。
2008年に舞台化された際に書かれたものを小説化したものです。
本編の最新刊と比べると、もう5年も前の話なので、
あのキャラがまだ出てきてない!とかがあります。
そして、本編の主軸である八雲と、黒幕である赤い眼の男との対決が、
この番外編にはありません。
赤い眼の男と関係ないところでも、彼らはこんな事件に巻き込まれていたんですよ、
というような感じの話です。

しかし番外編とはいえ、彼らは相変わらずいい味を出してます。
晴香は厄介ごとを持ち込み、
八雲が皮肉を言い、
後藤は八雲に弄ばれ、
石井さんはよく転ぶ。
彼らのいいチームワークで、徐々に事件が真相に迫っていく感覚はまさに本格ミステリー。
赤い眼の男とのしがらみがないので、むしろ純粋に謎解きを楽しめます。
そして、相変わらず八雲と晴香の関係性がイイ!
なんだかんだと文句を言いつつ、晴香のため、
そして幽霊を含む人のために動くというツンデレっぷりがたまりません。

そして、今回の話の主軸は、なんと石井さん。
本編では大分カッコイイところも増えてきた石井さんですが、
この時期はまだなよなよしてる感じです。今もか。
個人的にすごく好きなキャラクターなので、彼の過去に触れられて感慨深くなりました。
ああ、石井さんが強くなっていった要因の一つは、
もしかしたらこの事件でもあるのかなぁ、とも思います。

これを舞台でやってたんだと思うと、どういう演出をしてたのかなぁと色々想像して、
それはそれで面白かったです。
また舞台化するので、そちらは見に行こうと思っています。

本編にはあまり関係が無く、しかしキャラクターが生き生きとしていて、
そして石井さんという人間を掘り下げる、すばらしいanother filesです。
本編シリーズとあわせて、どうぞ。


 



◎本れびゅ。

作者

岡崎琢磨
小野不由美
神永学
大崎梢
辻村深月
 →作者毎一覧

出版社

角川文庫
講談社
新潮文庫
文芸春秋
宝島社文庫
 →出版社毎一覧

発行年

2010年発行
2012年発行
2013年発行
 →発行年毎一覧

記事更新日

2013
12 10 09 08
 →記事更新日毎一覧

ワード検索